椎間板ヘルニアの治療は、原則として保存的(投薬や注射)に行われる。生死に関わらない限り、手術のリスクが大きいと考える。手術をするかしないかの判断は下記の通り。
- 生死に関わる状態なら手術する
- 社会生活に支障があるなら手術する
前者については、疑いの余地はないだろう。排便や臓器の働きに支障があるならば、症状の解消が急がる。
後者については、判断が難しい。症状を抱えたままでも社会生活を送れるなら、手術のリスクを考え手術をしない方が良いだろう。一方、症状が比較的軽い場合でも重労働をしないと生活が成り立たないのであれば、手術に踏み切る必要がある。
患者として認識すべきことは、下記の3点。
- 発症から約3か月間は痛み止めなどの保存的治療が行われる
→患者が申し出ない限り手術の話にはならない(生死に関わる場合を除く)
→「こんなに苦しんでいるのに、ちゃんと治療してくれない」と思いやすい - 手術の予定は混んでいる
→1~2か月の待ちは当たり前である
→総合病院であれば生死に関わる病気の手術を優先する
→医師の側から積極的に手術をしましょうとはならない - 医師には専門がある
→脊椎が専門でない医師は積極的に手術を勧めない
→日本脊椎病学会の指導医がいる病院がお勧め
社会生活に支障はないが痛みを何とかしたいというレベルならば、手術のリスクを考えて勧めないが、本当に困っているならば手術をしてくれる病院を選ぶべきである。
また、手術が決まってから手術日を迎えるまでに症状が改善した場合は、手術を延期すべきである。確かに病院に迷惑をかけることになるが、それ程リスクが大きいということである。筆者が治療した病院では、手術のキャンセルが発生したため翌日に手術予定の患者を繰り上げていたくらいなので、病院に対する迷惑も思った程では無いようである。早く手術して欲しい患者は沢山いる。
繰り返しになるが、手術のリスクは大きいので安易に勧める訳ではない。しかし、社会生活に支障があるならリスクを負ってでも治療を進めても良いだろうという意味である。