あまり眠れぬまま朝になった。
特に心配や不安を感じていないのだが、眠れないということは緊張しているということだろう。9時から手術ということで、目覚めるなりイベントが目白押しである。浣腸、シャワー、髭剃り、着替え、点滴などを粛々とこなして行く。準備が終わって待っているときに、主治医が現れ術式を少し変えると説明してくれた。説明は分かったような分からないような感じであったが、帰り際にしてくれた握手によって任せる決心ができた。予定時刻より少し遅れて手術室から呼ばれる。手術室のベッドに寝かされ、センサー類が付けられたところで、口にマスクを当てられる。そのまま呼吸するように言われたので呼吸を続けると、揮発性の香りが漂ってくる。ちょっと臭いですよと言われるが相当臭い。そして呼吸するたびに眠くなり、記憶が無くなった。
誰かと会話した記憶がある。先生にお礼を言ったり、自分の居場所を聞いたり、雑談をしたり。しかし全てが曖昧である。事前に、麻酔が覚める時に、口にチューブが入っているため気持ち悪いですよとのことであったが、全く覚えていない。
夕方くらいから記憶がしっかりしてきて、痛みも感じ始めた。傷はジンジンと感じる痛みだが思った程ではない。尿道のチューブは、痛いというよりは違和感がある。両足の踵には血流を良くするための装置が付けられており、定期的に揉まれる。酸素量を測る器具が指先に付けられており、これも違和感がある。寝返りを打てないので体が痛い。ベッドが妙に硬い。要するに寝苦しくて寝られないのである。
時計が無いので時間の経過が分からず悶々と過ごす。巡回に来た看護師さんに時刻を尋ねると、枕元にあった時計を見えるように置いてくれた。時刻が分かるようになると、今度は、時間が進まなく感じて悶々とする。
つらい。